※ダテ←サナ気味。

「Is there anybody out there?」


 その関係を始めたのは、幸村である。盟友となったとはいえ、いまだその真意の知れない男を見張るという名目で、自分の体を捧げた。
 信玄は、知っているだろうか。幸村の心に宿っていた、一種病的とも言えるその恋心を。

 知っていただろう。だからこそ、幸村が彼の伽役をすると言った時も一瞬目を閉じただけで(それは瞬きより少し長く、しかし幸村が見咎めるほど長くはなかった)それを許したのだから。
 幸村は奥州の龍と称される伊達政宗に恋をしていた。それは全く確かなこと。そしてそれは、酷く哀しい恋の仕方であった。それも全く、確かなこと。

 純粋さとは時に痛みを厭わない強さとなる。

 だからといって、幸村が痛みを感じていないわけではなかった。





「あ、ああ…………っん」

 最初に抱かれた時は痛みしか感じなかった。それは僅か三ヶ月前のことのはずなのだ。

「ずいぶん慣れたじゃねェか」

 政宗は耳元で囁いた後、耳朶をそっと噛みしだく。正常位で貫かれていた幸村は、政宗の体勢の変化による刺激で甘い声を再び上げた。まるでなすがままにされる雌犬のようだ。

 幸村が夜伽として彼の前に立ったとき、政宗は一瞬瞳を瞠って、それから楽しそうに嗤った。緊張した面持ちで強張っている幸村の腰を優しく抱き寄せると、女を抱くように優しく、優しく。慣れていない幸村にも決して怒ることなく、時には微笑みすら見せた。
 だが、幸村は知っていた。それが、嘘の表情であることを。彼が自分に優しいのは伽役だからで、今まで政宗が行き掛かりで抱いてきた女達と自分が今同列に並べられていることを。

 幸村の体は政宗に染められている。彼が好むような反応を必死で覚えたし、どんなに厭だと思うことでも彼の頼みならやってきた。だからきっと、幸村の体はもう政宗にしか満足できないだろう。

「ふ、ふっ、あ、駄目……だ、やめ、ろ」
「やめられねェな」
「う…………っん、ッはぁぁあっ!」

 目の前が真っ白になって、全てが政宗へと向けられて、自分が彼と一体になっているかもしれないという錯覚が幸村を更なる深みへと追い込んでいく。

 霞となって彼の体に吸い込まれ、水となって彼の体の中を巡り、彼の一部となっていく。そんな幻想が、混迷しているようでクリアな思考を支配しかけて、だがすぐ一筋の涙へ変わった。

 政宗が達した幸村の上半身を抱き上げ、対面座位の体勢になる。政宗が一層深く幸村の中を抉り込み、幸村はもう一筋だけ涙を流した。
 偽りの嬌声を上げて政宗の胸にしな垂れかかる。
 政宗にとって体の価値しかなくてもいい。偽りの愛撫でも、偽りの睦言でも構わない。

「アンタ、最高だ。男妾にしてやるから、仙台に来い」
「戯言を…………」

 この偽りの平和の中で、偽りの愛を。

 彼の心に、少しでも引っかき傷を残せるのなら、何でも構わないと。
 政宗の胸板に顔をうずめて、幸村は薄く微笑んだ。






黒幸様降臨。幸村さんは重いコンダラな人だから純粋に腹黒いと思います!結局続きます。