或るインクの紙魚(死ネタポエム) 迦陵頻伽 あるろなれあなの攻防(♀幸村)
それはまるでトルエン入りキャンディのような。(転生) ながいあるひのこと。

「或るインクの紙魚」


手に馴れた道具が(それは殺すための)滲んでいく
闇の中のたまゆらは真っ白な雪にとても良く似た
おつる椿咲き乱れるさつき夜のあなた更に最果て
頸から迸るいのちに塗れる渇きの渦というおれ
狩るもので刈るものでおまえは狩られて刈られた
刈られたものと狩られたものでおれは刈られて
狩られて
落ちて
焼け付くような冷たさがたまゆらに揺れるように
殺したおまえの血がおれから消えずに
視界から消えずに
あえかな息を吐きながら
おまえの血がおれの視界を(世界かも知れない)
断末魔の笑顔を飲み込みながら
消し去れと
移ろい往くのならばいっそ消し去れと
おれを
脅迫しているのだ
移ろい行かぬ神ではないおれはそんなおまえに
椿とさつきと曼珠沙華のはなびらで飾った
揺らめかぬぬばたまのたまゆらを捧げるしかないのだ

断絶した永遠。
断絶した永遠。
断絶した永遠。
断絶した永遠。
断絶した永遠。

足元におつる
白き木蓮

ふわりと揺れる
切り取られた菊の花

揺れる揺れる揺れる鯨幕
しろとくろと
笑えと笑うと




ぽ、ぽえむだー!



「迦陵頻伽」


 泣け、と闇が言った。
 目の前に流れるさらさらとした銀色、その内側に幾つもの花が咲き乱れている。しかしそれらは揺れることもなく、ただそこに凍り付いていた。

 泣け、ともう一度声が響いた。だが、泣くことを忘れてしまった自分はただ唇を噛むだけだ。首にかけた六文銭が「カツリ」と鳴った。凍りついた花々が共鳴して、沢山の「カツリ」が闇に響く。
 此処はどこであろうか。呟いた声にいらえはない。体中をぐるぐると縛る糸が、肉に食い込んで痛い。

 泣け、と響く声から顔を背ける。
 世界が割れて辺りに光が満ちた、そしてまた泣け、と響く。それは例えようもなく麗しい声の集合体で、おんなのようでもあり、おとこのようでもあった。自分が立てる「カツリ」など、貧弱でしようがないと思うほどに。
 目の前の銀色が蠢いた。
 凍りついた花々が動き始める。
 ゆうらり、ゆうらりと流れる銀色にあわせてその身を左右に振りはじめる。その中の一つに、目を奪われた。

 紅い鬼灯と、青い竜胆。

 微笑が零れる。
 まるでそれは、自分と彼のようだ。

 光満ちた世界で、銀色の川。空に舞い飛ぶ美しき声。六文銭が風に揺られて音を立てる。

「死んだのか、俺は」

 泣け、と五度声がした。それでも涙は出なかった。
 なぜならば、誓いの糸が引き止めているのだ。黒と群青の紐が幸村の身体をしっかりと抱き込んでいる。

「死なぬ、泣かぬ。それが誓約なればこそ」

 強きことよ、と声が響いた。頭上を仰げば、柔らかな空色に金色と桃色の雲が棚引き、そこに踊るのは麗しき天女。




ぽ、ぽえむだー!(二度目)



「あるろなれあなの攻防」


「なあ」

 夕日の射し込む教室に、二人で残っていた。見慣れた和装の少女が政宗の声に振り向いた。
 凛とした顔つきだ。強靭でしなやかな竹のような。

「なんだ」

 手を伸ばす。何も言わずに彼女は政宗の手を取った。柔らかなその手こそ世界で一番誰よりも強い力を持っている。人などはるか及ばないほどの。
 それが、政宗と幸村を別つ原因なのかと問われれば違うはずだ。少女が何であろうと、誰であろうと、政宗は迷わずにこの手が自分を求めることを願っただろう。

 見せるのだ、全てに。愛と絆の強さを、世界の全てに、別とうとする者たちに。一生一度の誰かを愛したときに少年は男となり、少女は女に変わる。それこそが強さであり、政宗が見ることのできた可能性だ。
 もう一組の彼らもそれに気付けばいいのだが、現状では望み薄である。

「駆け落ち、しようぜ」
「学生だぞ」
「構うかよ」
「……政宗、本気なのか?」
「ああ。俺は、お前と居たい」

 手を強く握られる。その手を自らの額に押し付けた少女は軽く息を吐いた。泣きそうな笑顔が、酷く胸に響く。

「……ついていく。政宗の後ろならば、どこへなりとも」
「そうか」
「真田幸村の名など要らぬ。政宗の連れ合い、それだけで良い」
「ああ、ありがとう」

 茜色の空が赤紫に変わっていく。

 教室には誰も残っていない。

 ひっそりと机だけが沈黙に殉じていた。




K介さんのパラレル設定をお借りして。この二人、子供作るために駆け落ちしてるんだよね。高校生!高校生!!
幸村さんは人間じゃないです。



「それはまるでトルエン入りキャンディのような。」


一生に一度きりのことをしようと思った
喫茶店で合席になったひとにそれを話した

「面白そうだな」

静かな強い燃える焔の目をした彼は真剣にそういった
それなら一緒にやるか?と持ちかけてみれば頷く
これが恋か、と初めて知った気分だった

「いいのか?人生まだ長いだろ?」
「長く意味もなくすごすなどそれこそ無価値」

そして彼は真田幸村と名乗った
今俺の隣に居る

例えばこの海の向こうに何があるのかとか
例えばこの空の向こうに何があるのかとか
なんでこの世界にはここしかないのかとか

そういうとても簡単なことを俺たちは知ることが出来ない
だったら実際に体験するしかないじゃねえか

青い青い空が俺と幸村を嘲う
戦車をジャックして港へ向かい
空母をジャックして海へ出る

全てが青い世界

「まるで、おぬしのようだな」
「Ha、それはどうも」

上空にはきっと軍事衛星
俺たちをピンポイントで狙ってる
ヘリが青い空の向こうに浮いている
知ってるさ逃げ道なんてないってのも本当にあそこ以外に何もないのも

でもそれでも

あのまま疑問を忘れて生きてくよりもリアルな体験をして一瞬で蒸発するほうが俺には合っていた
ああそうかそれは
幸村もそうなのだろう

「最後の晩餐、ってか」
「悪くはない」

とっときのシャンパンに沢山のチョコレイトとクッキー
二人だけで乾杯
二人だけに乾杯
そして俺たちは初めてキスを交わす

「Good Night,Darling」
「ああ、しばし眠ろうか」

手を繋いで見る夢はいいものだろう
さあ眠ろう残酷な世界など見捨ててやるさ

光 が 一閃
海 が 沸騰

ふたり は … …




「Are you ready!」
「いざ、参らん!」

一夜の夢か

「Ha!真田幸村、見つけたぜ!」
「独眼竜政宗殿!お手合わせ願おう!」

永遠の未来か

それ全て些末な事だと




今年休止しちゃった某虹バンドのとある曲をいんすぱいあーざねくすと。
二人ともきっと根っこは衝動的な人なんじゃないかなあと。



「ながいあるひのこと。」


 それは木が風にざわめいた瞬間だった。

 雷を纏う男が、鮮烈な焔に包まれた少年へと向かっていく。少年は不敵に微笑むと、柔らかな仕草で得物を構えた。雷鳴と焔が風を呼び、そこいらじゅうにある塵芥を空へと舞い上げていく。
 何度目かの、戦場での邂逅。

 激しい風が吹き荒ぶ中、二人は得物を合わせて闘いを始める。はじける火花が風に飛んで、はじけていた。
 互いの力量は拮抗し優劣がつかない。少年はそんなことは解っている、と頭を振る。なぜ、お互いはこうして闘うのか。

「考え事とは余裕だな、幸村」

 噛み締めた歯の隙間から男はそう、少年に呼びかけた。
 その声になんら反応せずに少年は男を見返した。楽しそうに笑う、この男。端正な整った貌をしている。少年とは違う、すでに男となった貌だ。惜しむらくは右目が眼帯に覆われていることなのだが、それもこの男の魅力を損なってはいない。どこか危険な雰囲気を彼に与えている。
 少年は知っていた。自分が何に捕らわれこの男と闘うのかを。そしてこの男が何故、自分と闘うのかも。

 風が酷くなる。

 男はそれに気付いているのだろうか。
 気付いてはいないのだろう。少なくとも、少年の瞳の奥にある葛藤を彼は気付いていない。
 だから、と少年は思う。
 だから、少年からはなにも言い出すことが出来ないのだと。

 その名も、その地位も、少年と男は何もかもが違う。惹かれたのはだからこそだろう、しかしそれ故に少年は想いを秘した。自分から歩み寄るには、少年の自尊心は少しだけ高く、少しだけ低く。そして腕を取るには少年は純粋すぎた。
 愛情の区別をつけられないからこそ、少年は少年なのだ。

 それは木が風にざわめいた瞬間だった。

 突風に体勢を立て直そうとした二人は、手が触れたことに気付く。
 一瞬だけの接触だったはずだ。しかし手は離れない。

 得物をお互い取り落とし、手を握る、身体を抱きしめる。離すまいときつくきつく抱きしめられ、少年は息を吐いた。
 熱い腕だった。
 頤に手を添えられ上を向かされる。覗き込まれた瞳から目が離せない。光る雷光に似て強い瞳だ。

「んんっ、んむぅ」
「幸村……」

 その強さから瞳を守るように伏せた瞬間、唇を奪われる。
 舌を絡められ、何度も何度も口付けられた。抵抗など出来ようはずもない。それは少年が望んでいた行為なのだ。男はそれを知っていたかのように、少年を奪う。

 男の腕の中で、少年は愛に喘いだ。




戦場両想い!幸村様はツンとクールの間です。