かほご(♀幸村・ダテサナ分含) 壷中天ノスタルジア(主従過去捏造) クロッキー #日常

「かほご」


 いきなり信玄の部屋に呼ばれた佐助は、いつも通り庭石の横に膝をついた。胡坐をかき障子を開けて庭を見ていた信玄が顔をしかめる。

「佐助、内密の話しぞ。部屋へ入れ」
「いやあの大将、俺様一応」
「ならば命令する」
「……旦那も大将に似て頑固ですよね」
「あれは昌幸仕込だ」

 仕方なく上がったはいいが、滅多にないことなため緊張しっぱなしだ。部屋自体には警備などで入ることは多いが自分が畳に座ることになろうとは。
 気まずい空気の中、信玄が幾つかの紙を取り出した。

「実はな……これを」
「な……!お見合い写真!!?」

 出てくる出てくる、たくさんの写真。諸国すべての見合い写真を持ってきたようだ。どれもすでにチェックが一回入っている。写真の脇にびっしりと書き込まれた文字が、怖い。
 信玄はそそくさと写真を二つのグループに分けた。

「こっちが既婚、こっちが独り身。先に独り身を……」
「大将、一旦待って。誰のお見合いか確認していい?」
「……お主、男色の気が」
「なーいーかーら!!!!」

 思わず怒鳴ってしまう。が、内密の話し合いだ。それ以前に忍を座敷に上げている信玄の立場がまず

くなってしまう。佐助は肩を落とした。

 見てみれば、写真はどれも男前揃い。親馬鹿っぷりが見て取れる。

「……でも、ちょっと早くないですか?」
「うむ。そこを解ってくれる婿を探すつもりじゃ」
「つまり、条件としては」

1.妻を立てる夫
2.妻が戦場に出ても怒らない(一緒に戦場に出るのが最も良い)
3.妻のわがままを95%許す
4.種馬扱いしても怒らない
5.妻を溺愛する(最重要項目)

「という感じで?」
「正しく理想じゃな……」

 語っていても話にならない。とりあえず探してみよう、ということになり。二人は見合い写真を一枚取ってみる。

「ううん?名前『長曾我部元親』。趣味『編み物・リリアン・美容研究』」
「却下!女々しい男などいらん!」
「次、『前田慶次』。趣味『放浪・女郎買い』……だめ!」
「却下ァッ!」
「えっと次、『あけちみt』」
「却下!!」
「うーんっと、『直江兼続』。趣味『俺は無敵』」
「却下ッ!」

 そんな感じで既婚も含めて一周したが、条件に合う以前に幸村を娶わせてもよいと判断できる男はいなかった。
 佐助はため息をついて写真の山を見た。いっそのこと信玄が幸村を、とも思うが、親子同然に育ってきた幸村にはきついだろう。

「……佐助、わしの養子に」
「ちょ、大将目が据わってる!ってかそもそも俺は旦那をそういう風には見れませんって。それなら大将が旦那を」
「あれはもうわしの娘だ」
「ですよねえ、全くほんとどうすりゃ」

 そこまで言って、佐助は気付いた。
 お家柄もよく、本人の器量もよく、幸村と歳も近くまた政略的に考えても文句のない男が一人いる。だが信玄は彼の写真は持っていなかった。

「……大将、そんなに嫌ですか」
「……浮気する確率が高そうでな」

 わしの若い頃にそっくりだ、とぼやく信玄に佐助はげんなりした。確かに幸村を泣かせたくないという気持は解らなくもないが、もっと自信を持っていいのだ。
 つくづく自分も、彼女を溺愛してるのだと呆れてしまう。

「旦那なら心配ないでしょ。可愛いし」

 その言葉に、信玄は深く深く頷いた。

 後日、片倉景綱が繋ぎを取ってきた。これ幸いとそれを受け入れる信玄はどこかうきうきしていたとかしていなかったとか。




過保護な保護者二人のバカ騒ぎ。ヴァルキューレ葬送曲の続きというか、プレというか。
案外、無敵はいい旦那になりそうだなあとか思ってました。



「壷中天ノスタルジア」


「もっとふつうに話せ。あと笑え」
「そう仰られましても」
「主の命が聞けぬか」

 佐助は眉を顰めた。

 無表情は常の事。昔よりそうするよう躾けられているため、癖のようなものだ。幾ら説明しても主は理解してくれない。二人がいるのは天守の最上階。主の我侭に佐助が付き合った形だ。主従というよりは兄弟のような関係に、城の者はほとんど微笑みをもって二人を見る。

 そこそこ実力を認められた忍といっても佐助はまだ子供と言われる歳で、主は更に年下だ。まあ傍から見れば微笑ましい光景なのだろう。

 まあいい、と言って主はこてん、と寝転んだ。

「佐助は強いのか?」
「お弁丸様をお守りできるほどには」
「羨ましい。弁も早く強くなりたいものだ」

 そして父上と戦に出る!と主は笑う。佐助はその言葉に頷いた。彼は歳からすれば天才的な武芸の才能を持っていた。その夢がかなうのは、遠い未来ではない。

 だが佐助は、勿論彼の主も知らない。

 その夢はけして叶うことがないということを。

「お弁丸様ならすぐに戦場に立てるでしょう」
「ほんとうか、佐助!」
「強う御座いますから」

 ふと、城の中の空気が変わった。佐助は辺りを素早く見回す。畳に耳をつけて様子を探れば、小さな話し声が聞こえた。

「佐助――源次郎幸村と……弁を」

「何――言っている。死ぬ……だから」

「逃がせ、弁を――聞こえているだろう、佐助――……晴信様の下へ!」

「黙……、一族ともども死ぬがいい――すでに長子は」

 その後はきっと断末魔の声。

 主も何か不穏な空気を感じ取ったらしい。佐助の行動をじっと見つめている。ふ、っと佐助は主を見遣る。そしてその小さな体を担ぐと、天守から外へと飛んだ。

「な、さす」
「お静かに」

 裏庭に降り立ち、辺りの様子を窺った。城の周りは固められている。いわゆる少数精鋭で来たらしい。誰も大騒ぎしていないが、気付いていないのかはたまた。

 とりあえず、隠れなければならない。一つだけ、誰にも知られることのない隠れ場所があった。城の隅にある井戸へ主を抱えたまま行くと、中へ飛び込む。途中にある少しだけ出っ張った木の根に足をかけて壁に見せかけた布をめくった。

 これは主に頼まれて佐助がこっそりと作った所謂秘密基地だ。中に入り、木をひっこめる。少しだけ進むと、丁度天守の真下に出た。暗い地下室で、本当は天守の側からも入れるようになっている。かなり狭いが、我侭な主のおかげで悪くない環境だ。きちんと明り取りの窓も付いていた。

「佐助、どういうことだ」
「……昌幸様、信幸様がお隠れになられました」
「な、何を」
「おそらくは村松様も」







 城の中は静まり返っていた。誰一人気付いていないようだ。

 おかしい。明らかに、おかしい。もしかしたら、ほぼ全員が。

 佐助は意を決する。このまま朝までいても、状況は打開できない。今、城に控えているのは佐助一人なのだ。

 応援を呼ぶにしてもここでは呼べない。ここは安全なのだ、しばらく主を一人にしても平気だろう。

 佐助は後ろでうずくまっている主に跪く。

「様子を見て参ります。ここでお待ち下さい」

 その時。羽織りの裾を小さな力が引っ張った。

「お弁丸様……?」
「佐助も、行くのか」

 まだ小さな手のひら。大人用の槍を持てずに落としてしまう手のひら。

 自分はこれを置いていこうとしている。立て続けに置いて行かれた彼を置いていけるのだろうか、佐助は自問してみる。ただそれが無意味なことは問う前から知っていた。

 一人には、出来ない。

「……おいて行くのか」
「お弁丸様」
「おいて行くのか」
「……お弁丸……様」

 たまらずに抱きしめる。

 この人は感情を殺せない。幾ら、武家に生まれたとはいえまだ子供なのだ。子供は子供なりの利用価値があると考える、里に生まれた人ではないのだ。

 人一倍それを良く知る自分が、今この人を振り払って行けようか。

「行きませぬ」
「佐助……」
「こちらに控えております。ご心配なさらず」

 目を合わせて微笑めば、彼も頬を引き攣らせた。極度の緊張が解けたのかその頬を涙が伝う。あやすように背を撫でた。

 後頭部から背中にかけて何度も何度も撫でる。やがて、小さな肩が震えて嗚咽が暗闇を震わせた。

「父上……兄上……姉上……左馬助……すまぬ…………弁が、俺が」

 あまりに重い声に、佐助はただ彼を抱きしめることしかできない。







「お弁丸さま。朝で御座います」
「う…………ん、佐助か」

 暗い地下室に、一筋朝日が差し込んでいる。

 朝一番に烏を飛ばし救援を呼んであった。先程まで戦闘する音が聞こえていたが、既に途絶えている。

「そうか、夢ではないか」
「……申し訳御座いません」
「佐助」

 主は俯いて、佐助に手を伸ばした。その手を取って跪く。

「某の名は」
「昌幸様のご遺言によれば、「源次郎幸村」様と」
「そう、か。…………なあ」

 彼は決して顔を上げない。まだ子供なのに、立とうとしている。佐助の胸はひどく痛んだ。

「今日だけは、まだ。今日だけは、弁でいてよいか?」
「勿論にございます」
「明日からは「幸村」になろう。だが」
「願わくば、御気が済むまで、お弁丸様でいられることを」
「何?」

 まだ、だ。まだ、彼はこちらに来ないで欲しいのだ。

 彼の家族の代わりにはなれない。それでも、出来得ることならなんでもしたいと佐助は望んだ。

「元服までまだ御座います。何れ真田の当主となられるにしても、しばらく世を学ばれたほうが宜しいでしょう」
「佐助……」

 漸く顔を上げた主に、微笑みかけた。

「恐れながらも、昌幸様もそのようにお考えだったと存じます。後見人をすでに指定されておられます故」
「父上がか」
「はい」

 子供はまた、涙を零した。

「佐助」
「はい」
「無表情以外もできるではないか」
「ええ、勿論」

 ほろほろと涙が床に落ちていく。ゆっくりとその染みを広げていく。この人は、まだ、そうまだ、弱くていいのだ。強くなるのは先の話。

「いつか」
「何ですか?」
「佐助と一緒に、戦場に立ちたい」

 子供は手を真っ直ぐ朝日に向けて、うっすらと、笑った。







「佐助ェッ!!」
「はいはい、何ですか」

 あれから何年か。主は父の主であった甲斐の虎に引き取られ元服した。

 その槍の腕も上がっている。戦場に立つのも、時間の問題だ。

「もう少しでお館様と共に戦場に立てるだろうか?」

「そりゃ大将次第でしょ」

 多分「慢心するな!」と殴られるのだろうけど。二人のノリには正直ついていけないが、本人達が幸せそうだから放っておくことにしている。

 幸村の夢が少しずつ変質していくのを佐助は見ている。それは寂しいことではあったが、それでも嬉しいことがある。

「見ていよ、佐助!幸村はやがてお館様と共に戦場に立つ!」
「知ってますよ」
「佐助は幸村の後ろを護れ」

 当然のように彼の中に自分がいること。




前サイトの遺物。幸村の性格が違うー!



「クロッキー #日常」


 朝から晩まで、なんていうか、つきっきり?そう考え込んでしまうほど猿飛佐助とその上司……であるはずの真田幸村は主従関係から大きく外れている。

 それは佐助の方の認識で、幸村には自覚はないらしい。むしろあったら佐助は上司といえど殴っているだろう。いや、たまに頭を叩くけど。

 普段はよく言えばのんびり、悪く言えばぼけっとしているのに戦場に出た途端軍神上杉を超えるほどの働きを示すのだ。なのに普段は子供が転んでも受け止められないほどぼけっとしている。その上頭から団子を浴びてそれでもぼけっとしてられるのだ。絶対同一人物ではない。

「佐助ー!」

 ああほらまた呼んでいる。さっき幸村をたたき起こして(何故か佐助が起こしに行かなければ起きなくてもいいと思っているのだ、育て方を間違ったらしい)朝御飯を食べさせたばかりだというのに。少しくらい佐助に自分の時間というものをくれてもいいと思うのだが。

 時々佐助を仕事に出しているのを忘れて呼んでいることもある。そういう時は後から幸村に叱られるのだが、佐助としては自分が叱りたい。むしろ叱る。こっちは休日返上で幸村のために働いているのだと怒鳴る。

 そういえば少しは悪いと思っているらしくおとなしく黙るが、数週間もすればそんなこと綺麗サッパリ忘れているのだ。

「佐助ーー!どこにいるーー!」
「縁側に居ますって」

 仕方なく佐助は縁側から返事をした。ちなみに今は幸村が拾ってきた猫やらなんやらに餌を与えている。これだって最初は世話をすると言い張ったのだ。まあ確かに猫とかとはきちんとじゃれているが、それは世話とは言わない。

 それが解っていて飼うことを許している自分に思わず眉をしかめた。と、ちょうど幸村がやってくる。

「?なぜ機嫌が悪い」
「アンタが馬鹿だからですよ。なんか用ですか」
「馬鹿とは何だ。髪留めがどっかにいっただけだ」

 はぁ、と佐助はため息をついた。そんなの置く場所をきちんと自分で決めてそこに置いておけば済む話だ。偉そうに言うなよ、と言い返したくなる。大体佐助は置く場所を幸村に決めさせているのだ。

「おいておく場所決めたでしょうに」
「……置いたはずなのに無いのだ」

 そっぽを向いてそう呟く幸村に再びため息。全くこの子は何言っても言うことを聞かない。翻訳すると多分そんな感じのため息だ。

 幸村は気まずそうに下を向く。

「すまん」
「いや別にいいんですけどね」

 仕事の内ですから、というと幸村は少し寂しそうな顔をした。当たり前だ、これで仕事じゃないけどやっているなんて言ってしまった日には今よりもっと酷い状態に陥るのだろう。

 佐助の直接の上司は幸村だが、何故か信玄から月ごとに手当てが出ている。それはこの上司の世話なり何なりでかかる費用で消えていく。生活能力のない上司(でもサバイバルには強い)を持った部下は大変である。いや、確かにここまでする理由なんて、本当はないんだけど。

「それで、その帯の後ろから伸びてるのは何です?」

 だらしなく単衣を着ている幸村はあわてて後ろを見やった。帯に挟まっているのは白い紐。

 幸村が髪を結うのに使っている紐だ。

「おお!すごいな佐助」
「アンタが注意力足りないだけです」

 また餌をやり始めた佐助だが、幸村の気配が中々去らない。猫か文鳥とじゃれ始めたのかと思えば、なんと。

「佐助、結ってくれ」
「はぁ?!」
「俺がやるとぐちゃぐちゃになる」

 何歳児だ。

 思わず喉まで出てきた言葉を飲み込んで、動物達の水を汲んできた桶で手を濯ぐ。手拭で水を拭き取ると佐助に背中を見せて座っている幸村の後ろに座った。

「ん」

 頼む、とかなんかないのだろうか。渋々紐を受け取り、懐から櫛を取り出した。

 幸村の柔らかな髪の毛をそっと梳く。寝起きのままの髪はいたる所へ飛んでいるが、辛抱強く何度も梳けばやがて綺麗にまとまった。時々ひっかかっては幸村が「痛い」と声をあげたが、そんなのにかまう佐助ではない。

「ほら、結えましたよ」
「ああ」

 当然のように返事をした幸村は、そのまま猫と遊び始めた。一緒に餌もやってるから、まあいいとした佐助は今度は幸村の部屋の掃除にかかろうとした……のだが。

「佐助、甘いものが食べたい」

 いつの間にか佐助の服の裾を掴んだ幸村がにっこりと笑った。







「ああほらこぼしてる!」
「ん?ああ」

 幸村行きつけの甘味処だ。何も言わずとも巨大なクリーム白玉ぜんざいが出てくるあたりが行きつけである。そして佐助にも何も言わずにエスプレッソが出てくるあたりも行きつけである。

 給仕の娘達がくすくす笑って幸村を見ている。時々聞こえる「可愛い」だの「萌え」だの……って萌えってなんだろう?佐助は思わず首を傾げたが、女の子の言葉なんてそんなものだと、たぶん可愛いに属する言葉なのだろうと判断した。

 歳からすれば童顔だし、可愛いといえなくはないのだろうが。確かに嬉しそうに笑いながら大きく口を開けてアイスクリームを頬張っている姿は可愛い……かもしれない。

 ただやたらとアイスもソフトも巨大なため、幸村は鼻の頭にクリームをつけてしまう。本当に注意力足りないんだから、と佐助はそのクリームを拭きながら朝から何度目かになるため息を吐いた。

「もう少し注意して食べてくださいよ」
「佐助も食べるか?」
「いいです」

 即答する。佐助は辛党だ。幸村のせいで。

 目の前で甘いものばかりどちゃどちゃ食べられては胃がもたれてくる。しかも味が解らなくなるからといって磯辺餅なども頼み始めるのだからたまらない。

「…………佐助は何も食べないのか?」
「ええ、別に腹も減ってませんし」
「そうか」

 既にクリーム白玉ぜんざいは残すところあとわずかだ。縦五十センチ直径十五センチは軽くあるグラスなのに、十分と経たずに食べてしまう。その間にもなんやかんや食べているんだから、全く持って底なしの胃袋だ。

 毎度毎度胃拡張か胃下垂じゃないかと心配してしまう。食事はそれ程食べるわけでもないので違うのだろう。

「満足ですか?」
「……ああ」

 おや?と佐助は思った。なんだか幸村の様子がいつもと違う。そういえばさっきも珍しく佐助は食べないのかなんて訊いてきた。

「どうしたんです旦那?」
「いや……なんでもない」
「なんでもないって顔してませんよ」

 幸村は食べていた手を止めた。

「佐助は、仕事だから俺と一緒にいるのか?」

 本人からすれば真剣そのものなのだろう。それでも佐助からすればそれは本当にどうしようもないほど簡単な言葉で済む問題なのだ。

 だから思わず微笑んだ。

「そりゃ、旦那が一番解ってるでしょ」

 だけどわざとはぐらかす。これ以上幸村が佐助に甘える口実を佐助から作るなんて、とんでもないことだ。じゃないとこの人、自立できない。寂しいけれど、幸村を自立させなければならないのなら、佐助のつまらない感傷は捨てていかなければならない。

「解らん」
「旦那が思ってる通りでいいよ、ってこと」

 下を向いた幸村の頭をぽん、と叩いた。

「じゃ、家帰りましょうか」

 家の一言に、幸村の顔が輝いた。







 屋敷に戻っても結局甘いものが食べたいと喚く幸村のせいで、佐助は食事を作る破目になった。ていうかなんでこの屋敷には飯炊きがいなのだろうと不思議に思っても、そういえば佐助がやるから必要ないと幸村が言っていたのを思い出す。

 おかげさまで料理の腕前ならそこらの料理人には負けない自信がある。

「佐助まだかー?」
「んな早く出来るわけないでしょうが!少しくらい大人しく待ってて下さい!」

 やっぱり自分の時間なんてないが、それでも幸せだと思ってしまう自分はおかしいのだろうかと佐助は考えてしまう。

「ちょっと、台所に猫入れないで下さいって!!!」
「餌をやろうと」
「台所じゃなくてもいいでしょうが!」
「よいではないか。佐助の作る飯は美味いのだから」
「意味が解りません」

 でもためらいもなく食事を美味しいと言って笑ってくれるのは、嬉しい。




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