「人として。」
手を入れれば、いいといわれた。
忍の技は戦場だけではない。むしろ、情報操作こそがその本領だ。その気になれば、自らの主すらも操ることが出来る。
久々に里帰りをして、現在の状況を愚痴交じりで話してみれば、
「なら、手を入れればよいだろう」
となんでもないことのように言われた。
庭に手を入れる、とかそういう意味ではない。
幸村の思考に、手を入れるということだ。
あの佐助を信頼しきっている子供に、与える情報を注意深く吟味し、僅かずつ歪めて伝え、それによって幸村の思考を制御する。
そうすれば、佐助を悩ませる現状は打破できるだろう?という、ありがたいお言葉だ。
かちん、ときた。頭を殴られたかのような、狂気。
この男は何もわかっていないのだ。
たとえ、奥州の馬鹿殿にご執心でも、佐助の目の前でいちゃこらこいてようと、彼は真田幸村だ。普段は隠れて見えないけれど、その思考は鋭い。情報の歪みなど、すぐに見抜く。
それに、なによりあの熱い信頼を、熱毒のように佐助を侵す信頼を失うのは何よりも辛かった。狂気めいて美しい紅蓮の瞳(色は決して赤くないというのに、なによりも炎に似ているあの瞳!)に睨みつけられることなど、佐助の魂は望んでいない。それを望む変態は別にいる。
「そう睨むな。それくらい、知っている」
男はにやりと嗤うと、佐助に袋を放った。中身は毒草である。
これを取りにきたのだ。
「お前が真田の若様に入れ込んでるのを知らない奴はいない。もしお前がそのようなことをしたならば、我らこそが敵に回る」
「旦那好きしかいないわけ、この里」
「お前が言うことか」
そういって、男は立ち上がった。
「師父、アンタってホント性格悪いよね」
「お前の師だ、心しろ」
真田忍軍は旦那FANで埋め尽くされてます。入隊条件だから!
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