※筆頭がとてつもなく格好悪いです。

「恋が入ってくると、知恵が出ていく。」


 幸村の唇をそっと塞ぐ。顔を紅く染めた幸村は、目を硬く瞑って受け入れた。舌を差し入れてやればその感触になれないようで、眉を顰めた。その顔の切なさといえば、これ以上はない。

 予想通りの極上さに心の中で舌なめずりする。
 大人しく待ち続けた甲斐があるというものだ。待った分だけ、味も上がっているだろう。歯茎の根元を舌で突くと、声が漏れた。甘く鼻にかかる声に本人は驚いたらしい。目を見開いていたが、更に口内を舐れば首を振りながら瞼を閉じた。

「っは、ぁ」
「厭か?」
「そ、そんなことは……っぅうん……」

 肺活量はあるだろうに苦しかったのか、幸村は肩で大きく息を吸い込んだ。見上げてくる涙の浮かんだ瞳に耐えられず、その唇を再び貪る。

 幸村の下唇を舐めて離れた。

 完全に息を上げてしまっている。大丈夫なのだろうか、と心配になるが、よく考えれば戦であそこまでタフなのだから全く問題はないだろう。鳶色の瞳に溜まった涙が零れ落ちた。
 頬に落ちた涙を拭い取ると幸村はかすかに微笑んだ。それがまた、艶っぽい。

「Okay、覚悟はいいな?」

 こくりと頷いた幸村を抱きしめる。帯を解くと、紅い単を脱がした。襦袢を脱がせようとすると、小さな声で幸村が制止した。

「何だァ、戦場ではもっと薄着してるじゃねェか」
「こ、此処は戦場では御座りませぬ!」

 仕方なくそのままにするが、幸村は解っていない。中途半端に脱いだほうが、よほど恥ずかしい格好なのだ。思わぬ効果に、政宗は口笛を吹いた。

「……なんで御座るか」
「何でもねェよ」

 軽く返して肌蹴た襟から手を差し入れた。軽く胸を撫でただけで幸村の体が硬直する。親指で軽く突起を潰すと体を震わせた。反応のよさに思わず笑みが零れた。
 割れた腹筋をなぞり、足の付け根を撫で上げる。

「やっあ」
「餓鬼みてぇな声出すなよ」

 呆れたように声に出したら、乱れた髪の下から視線が返ってくる。ただそれは涙に歪められて、幸村の意図通りには伝わらなくなっていた。

 声を出すのも億劫なほどの欲求が政宗を動かし始める。自分の体が自分の意思から離れていくのを政宗は面白く感じていた。がっつくなど粋ではないが、この状況、そうも言っていられない。
 幸村も政宗の雰囲気が変わったのを感じ取り、腰が僅かに逃げを打つ。腕でそれを封じ込め、幸村の下半身を覆う布を取り去った。

「絶景、だぜ」
「うぅっ」

 幸村が顔を覆って羞恥の声を漏らす。政宗は笑って、手を退けさせた。

「恥ずかしくねぇよ、幸村。こうなって当然の事をしてるんだからな」

 優しくあやせばすでに泣いていた幸村は政宗を見上げた。その目にはこれから起こる事への、ほんの僅かな期待と憧れ。

「いいか」

 かたかたと震える幸村の体を抱きしめて政宗は囁いた。

「アンタが怖くてどうしても厭なら、やめてやる。ほら、言え」
「……卑怯ではありませぬか」
「Ah?何でだよ」
「そ、そのように格好良いことを言われてしまっては、今更だめなどとは言えませぬ……」

 政宗こそそのように可愛いことを言われては止まれない。鼻の奥に違和感を感じながら、幸村に口付けた。

「覚悟しろよ」
「は、はい……」

 笑った幸村の頭を撫で、彼自身を手に取る。更に幸村の口に指を含ませた。

「噛むんじゃねェぞ、舐めるんだ」

 素直に幸村は舐め始める。時々、しごかれている快感からか歯を立てられてしまったが、このくらいは許容範囲だ。柔らかい髪にキスを落として、口から指を抜いた。

「ン…………」

 名残惜しそうな顔と声に政宗は頭が眩々した。

 本当に、あり得ないほど艶っぽい。こんな上玉を、今までみすみす逃していたのだ。埋め合わせも兼ねて、存分に楽しまなければ。
 後丘に手を伸べ、隠された場所に触れる。幸村は体を震わせたが、特に何も言わなかった。そのままつぷりと、指を埋めた。

「ッ」

 流石にきつい。

「力抜いてくれよ」

 指自体は滑るように入っていくのだが、どうにも動かせない。初めてだと思えば当然の事ではある。仕方なく指を抜く。
 そして幸村に声をかけようとして………………。





「………………!Damn!!」

 爽やかな朝に響き渡った政宗の叫び声に、鳥達が一斉に逃げ出した。

 確かにおかしいとは思った。あんな簡単に幸村が体を開くわけが無い。あの過保護に温室で育てられた性に関しては全くの素人が。
 同時に自分が情けなく、どうしようもない嫌悪感に体中が満たされる。

「思春期のガキか、俺は」

 それなりに遊び人だという自覚があったが、改めなければならないようだ。こんな本気は久しぶりである。
 そして何より今現在一番の問題といえば、鼻血で赤く染まった布団と襦袢と、それと。

 思いつく限りの放送禁止用語を自分に向かって喚きたて、政宗は「一人遊び」を始めた。朝っぱらから何やってるんだ、と半分泣きながら。





「佐助」
「何です」
「何故か解らぬが、寒気がした」
「はぁ。誰かに妙な噂でもされてるんじゃないですか」
「そうか……気をつけねばな」
「どうせ伊達の旦那でしょ」
「独眼竜殿はそういうことはせぬ!」
「はいはい解りましたから朝ごはん食べちゃってください」
「独眼竜殿になら、構いはせぬが……」
「タダでさえ暑苦しいんだから、惚気ないで下さいって」
「だ、誰が惚気てなど!」
「いやだからさー、朝ごはん食べてくださいって……」




なんつーか、コメントしがたい……。